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道玄坂洋楽英語倶楽部

コード感総集編(その2)





夢破れて山河あり~ミュージシャン崩れが教える音楽理論やり直し

「コード感」総集編 (その2)



「コード感」シリーズ総集編1はこちら

第9回



そんなわけで、今晩も「コード感」逝ってみましょう。。。

前回までで、「枯葉」のコード進行で、どのような内容を表現すれば自然な「コード感」が出るかを説明しました。

要するに、こういう内容であれば、自然に聞こえる、ということでしたね。。。

 

foliage4vld

 

 

これを単旋律で、どのように表現するか?

今日はそういうお話です。

巷で初心者がやらされるのは、とりあえず下から順番にルート、3度、5度、7度で弾いてゆくこと。コードはそれぞれ1章節の長さでチェンジするので、当座1拍で1個のコード・トーンを弾くことになります。

 

basic

 


これでも問題はありませんし、「コード感を出す」という所期の目的は果たすことができます。

しかし、これまで検討してきた「自然な感じ」とは、ちょっと違う感じになってしまいます。

それでは、3つの原則それぞれについて検討してみましょー。

1) ある音から、別の音へと跳躍する場合、その両方の音がコードトーンに聞こえる。
これについては、このパターンで問題ありませんね。全て2度以外で跳んでますので、それぞれがコード・トーンに聞こえます。

2) 不協和音程は2度で移動して協和音程へと移行すると、自然な感じに聞こえる。

これについては、前回お話したとおり、このままではパラレルのディゾナンスが生まれてしまいます。まあ、これが好きな人はそれでも構いませんが。。。

3) 人間の声と同様、跳躍の幅が広がってゆくと、不自然さも増加する。

このパターンで演奏してゆくと、跳躍の幅が結構広くなる場合があります。また、2度の動きが全くないので、「フレーズ」というよりも、「アルペジオ」に聞こえてしまいます。

そこで、同様にして1拍につき、コードトーンを1音弾いてゆくパターンを考えてみます。

4つの音の並べ方は、つぎの様に24通りあることになります。

possible4notesets

 

これだけあると圧倒されてしまいますが、このうちで条件を満たすものは限られています。

まず、ルート(R)と7度が連続する場合について考えてみます。

今表現しようとしているコード進行で、7→RまたはR→7という動きは、どちらかがアプローチノートに聞こえてしまいます。

アプローチ・ノートとは、ジャズの理論において、ステップワイズでコードトーンに移動するノンコードトーンです。


つまり7→Rはステップワイズの動きになってしまって 「1) ある音から、別の音へと跳躍する場合、その両方の音がコードトーンに聞こえる」 が当てはまらないからです。

 

 

substantialappnotes

 

また、7度が下降して6度に解決するという自然な流れにも反していますので 「2) 不協和音程は2度で移動して協和音程へと移行すると、自然な感じに聞こえる。」 にも反することになります。

7→RまたはR→7という動きでは、4和音の「コード感」の表現が難しいことになります。

次に言えることは、「3) 人間の声と同様、跳躍の幅が広がってゆくと、不自然さも増加する。」のところで申し上げましたが、 「1) ある音から、別の音へと跳躍する場合、その両方の音がコードトーンに聞こえる。」という定義上、あるコードがなっている間に、ステップワイズの動きを利用することが出来ません(利用してもいいけど、「コード感」と言う観点からは、利用しない方が良い、と言うことになります。)

従ってステップワイズの動きが利用できるのは、コードのつなぎ目だけ、と言うことになりますが、パターンとして5th cycleを演奏しようとする場合、共通する音がつなぎ目に来てしまうパターンがあります。演奏すると分かりますが、フレーズが止まってしまった感じになってしまいます。

 

samenote transit

 

つまり、4つ目の音が、次の小節にはない音でないと、不自然なかんじになっちゃう。
とすると、コードのつなぎ目でステップワイズな動きが利用できるようにするのが良いということになります。まあ、これは5th cycle に限定的なものであり、かつパターンとして、コードのつなぎ目で同じ音にならないように回避することができますので、それほど問題にはなりませんけど、ね。

具体的には、5th cycle において、4拍目は5度または7度が良い、と言うことになります。 

さらに、これらを5th cycle でつなぐことから、4拍目が5度または7度である場合、1拍目は必然的にRか3度と言うことになります。

これに当てはまるものは、4つしかありません。

best4notesets

さて、この4つのうち、パターンとして利用することを念頭に置くと、4拍目が7度・1拍目が3度あるいは、4拍目が5度・1拍目がルートという組み合わせでなければなりません。それ以外のものは、複数のパターンを組み合わせなければなりません。これはさして問題にはなりませんが、Bestとはいえないでしょう。

これで、コード感を最も自然に出すことの出来るパターンは、2つに絞られます。

次に、ちょっと難しいかもしれませんが、Basic Chord Sound というお話をしなければなりません。

いま、ここにCをルートとするコードが何種類かあったとします。

Cm7   Cmaj7   C7   Cm(maj7) etc.

これらのコードの違いは何でしょう? そうです。3度と7度が長音程か、短音程かが違うだけで、ルートと5度は共通する場合がほとんどです。

つまり、コードの響き(クオリティ)を決定づけるのは、そのコードの根音(ルート)以外に、3度と7度、ということになります。これらR、3度、7度を総じてBasic Chord Soundと言います。

Basic Chord Soundにおいて、殆どの場合、Rはベースが既に弾いています(注:3度の場合も往々にしてあります。)。つまりウワモノ楽器では、3度か7度を出来るだけ早い時期に出した方が、よりコード感を出すことができる、と言うことになります。

したがって、もうすでに弾かれているRを重複して弾くR375というパターンよりも、3R57というパターンの方が、コード感をより速く確定することができる、と言うことになります。

と、いうわけで、結果発表!

1位:3R57

2位:R375

3位:R357 & R537

4位以下省略。。。

それでは次回、実際これらがどのような響きになるかを試してみましょー!!



第10回



そんなワケで、「コード感」第10回です。

今回は、前回特定した「コード感」を表す理想的なパターンを何種類か試してみましょう!!

そんで、理想的なパターンは、ジャジャーン!!以下の通りでした。

 

awards

 


前回までは、ろくにキーボードも使わずに仕事の傍ら打ち込んだシンセのサウンド・サンプルでしたが。。。

今回は私がギターを弾いちゃいました。

ちなみに、知らない人のために。。。「枯葉」とは、こんな出だしの曲です。。。(リンクをクリックすると、サウンドサンプルが流れます)

♪ 「枯葉」

と、いうわけで、まずはフツーに何も考えないでポロポロ弾いた感じを聞いてみてください。一応難しい内容を出来るだけ避けて、わかりやすいように弾きました。

♪ 枯葉ポロポロ編・伴奏なし(伴奏なしでコードが聞こえるかをチェックしてみてください。)

これって、伴奏なしだとコード進行が聞こえにくいor全く聞こえないと言ってもいいでしょう。ただ、何となく「枯葉」には聞こえるかも。

伴奏があると、ちゃんと「枯葉」でソロを取っているように聞こえます。

♪ 枯葉ポロポロ編・伴奏あり

うん、まあフツーに聴ける感じではあります。別にことさら「コード感」を出そうとしなくても、これはこれでイイです。

しかし、旋律でしっかりとしたコード感を出すことが出来ると、様々なコンテクストでこれを応用することが出来ます。(適用は後で説明します。)

それでは、パターン1から行ってみましょー!!(リンクをクリックすると、サウンドサンプルが流れます)

まずは、初心者が良く教わるパターン(3位以下はこれだけです。。。)

♪ パターン1: ルート→3度→5度→7度 伴奏なし(伴奏なしでコードが聞こえるかをチェックしてみてください。)


♪ パターン1: ルート→3度→5度→7度 伴奏あり
伴奏なしでも、ちゃんとコード進行は聞こえますが、やはりコードのつなぎ目の跳躍が気になります。伴奏ともしっくり馴染みます。リズムに変化を与えると、それなりに楽しめます。

♪ パターン2: ルート→3度→7度→5度 伴奏なし(伴奏なしでコードが聞こえるかをチェックしてみてください。)

♪ パターン2: ルート→3度→7度→5度 伴奏あり
ちゃんとコードは聞こえていますが、2音目と3音目の間の跳躍が不自然な感じに聞こえてしまいます。これはとりもなおさず跳躍の幅が大きすぎること、同じ方向に連続して跳んでいることが原因です。。

そして、今回晴れて金賞に輝いたパターン。

♪ パターン3: 3度→ルート→5度→7度 伴奏なし(伴奏なしでコードが聞こえるかをチェックしてみてください。)

♪ パターン3: 3度→ルート→5度→7度 伴奏あり
ノーコメントです。


さて、こうして晴れて自然な「コード感」が出せるようになりましたが、これをどのようにして実践で用いることができるでしょうか?

とりあえず思いつくこととして、以下のようなことが可能になります。

1) 2拍毎のコードチェンジをちゃんと表現できるようになる。
2) テンション(9th, 11th, 13th)をはっきりと聞かせるフレージングができる。
3) より攻撃的なスケーリング・アウトが可能になる。

これについては、次回解説します!

 



第11回



さて、予告通り、「コード感」をしっかり表現できる3R57というパターンで実現可能な、

1) 2拍毎のコードチェンジをちゃんと表現できるようになる。
2) テンション(9th, 11th, 13th)をはっきりと聞かせるフレージングができる。
3) より攻撃的なスケーリング・アウトが可能になる。

を其々説明したいと思いまーす。

1) 2拍毎のコードチェンジをちゃんと表現できるようになる。

たとえば、ブルースのターンバック(最後の2小節)では、コードの動きがかなり忙しいですが、これを8分音符でコードをちゃんと表現しながら演奏することができるようになります。

 

F blues

 

特にギタリストは、この部分をペンタトニック1発で弾き切ってしまう場合が多いです。こんな感じ。

♪ ブルース:ターンバックはペンタ一発

これと、ターンバックでちゃんとコードを弾いてるパターンと比べてみてください。

♪ ブルース:ターンバックを3度→ルート→5度→7度のパターンで演奏

どうでしょうか?今までとは違う表現力が感じられるでしょうか。。。

2) テンション(9th, 11th, 13th)をはっきりと聞かせるフレージングができる。

単旋律で「コード感」を出す方法を、テンション(9th, 11th, 13th)を表現する際にも利用できます。
そもそもテンション・コードとは複雑な縦方向のコンテクストですが、これが十分に表現されていない場合を多く見かけます。
基本的に、テンションは「コードトーンに準ずるもの」として扱わなければなりません。なぜなら、Approach note, Passing tone, Neighboring tone など他のノンコードトーンとは異なり、和音で実際に鳴っている(鳴らしたい)音だからです。従って、テンションから「跳躍」(3度以上の音程で移動)すると、テンションがはっきりとテンションとして表現されるのです。

 

tensionexprev

 

この考え方を突き詰めて行くと、ある和音上で、「演奏したいテンションが含まれる別のコードを弾く」という考え方になります。

 

Em7 on CM7

 

たとえば、9thなんかは、ほぼ全てのダイアトニック・コードでテンションとすることができる、ということになってます。

つまり、「枯葉」では、元のコード進行の上で、別のコード進行が演奏できることになります。

 

 

foliage alternate prog

 

それでは、実際にやってみましょう。。。9thが使用できなくなった時点で元の進行に戻っています。今回はボサ・ノバ。

♪ 枯葉:別のコード進行でテンションを表現

なお、当然ですが、こうした場合には、「不協和音は2度で解決する」という原則は適用されません。なぜなら、「テンション」とは、そもそも縦方向のコンテクストであり、横方向すなわち対位法的なコンテクストを聞かせるものではないからです。

ただし、これを単旋律で表現しようと思った場合は、その旋律を個別に見て対位法のコンテクストを適用すると、より自然なフレージングができるようになります。

こうして旋律で何らかのコードを表現する以外に、テンションをテンションとして聞かせる方法としては、そのテンションの音価を上げる(強拍で演奏するand/or音の長さを長くする)しか、方法はありません。

3) より攻撃的なスケーリング・アウトが可能になる。

テンションよりも、さらに緊迫した音を積極的に用いる演奏家が沢山いますが、これはアヴェイラブル・ノート・スケールの呪縛から離れて、より自由な表現力を手に入れようとするものです。具体的には、「非常に不協和な響きをどのように用いるか?」ということなのですが、「スケール・アウト」とか、単に「アウト」と呼ばれます。強い酒をあおるような、そんな「極めて大人の味」のような感覚。はまるとノンベエのように、ヤミツキになります。。が、嗜好品のように、ちょっとなら、非常にオイシクいただける感じだと思います。。。

つまり、「アウト」な演奏とは、アヴェイラブル・ノート・スケール以外の音を積極的に用いることである、と言っていいでしょう。

それで、b5離れた調性(「ウラ」などといいますね。。。)のスケールを利用する、なんてことが頻繁に行われます。しかしこれ以外にもシンメトリック(オクターブを均等に割る)な概念から導き出された調性も多数用いられます。

でも、こうした調性の「スケール」を利用しても、なかなかアウトした感じにならないんですねー。

そんなとき、その「スケール」のダイアトニック・コードを表現するようにすると、かなり強烈にアウト感が出ることが多いです。

2つの例を聞き比べてみてください。1つ目はスケールをステップワイズで演奏したもの、2つ目はウラ・コードと呼ばれるb5離れたコードと、元のコードを交互に表現したものです。当然3度→ルート→5度→7度の順番です。

フュージョン調ですが、Sonarをお持ちの方は、何を利用しているかお分かり頂けるかと思います。。。

♪ アウト1:スケールを弾く

♪ アウト2:b5のコードを交互に弾く



第12回



コード感12回目の今日は、少々補足説明。

今回の内容は3つです。

1) 4拍目の7thが次のコードの3に解決すると、7thはアプローチ・ノートに聞こえないか?
2) 転回形を自由に使っているようだが、それは問題とはならないのか?

ということについてお話したいと思います。

1) Q:4拍目の7thが次のコードの3に解決すると、7thはアプローチ・ノートに聞こえないか?

はっきり言って、聞こえます。

 

App7th

 

しかし、クラシック(トラディショナル)において、「7thは下方向に移動して解決する」という内容を鑑みると、クラシック(トラディショナル)における7thの性質として、ジャズの理論でいうアプローチ・ノート的性質があるものと考えられます。つまり、ジャズ的な解釈では、「7thは上方向からのアプローチ・ノート(ホントは係留音)として利用する」というのが、数百年を経て未だに愛され続けているクラシック(トラディショナル)の特徴である、と言えるでしょう。

しかるに、「Rと7thが連続するパターンは、どちらかがアプローチ・ノートに聞こえてしまうから、ボツ」であるとしました。こちらは、なぜボツなのか。

7thからRにアプローチする場合を考えると、まず「7thは上方向からのアプローチ・ノートとして利用する」に反し、7thが上昇しています。
よく言われるのは、「7thはLeading Toneだから、Rに上昇する傾向がある」ということですが、クラシック(トラディショナル)において、5th Cycleで7thが利用される場合、ディゾナンス(不協和音)の解決はLeading ToneがRootに解決する強さよりも優先されています。

Rから7thにアプローチする場合については、こうした問題は起こりませんので、比較的両者がその時点における和音の構成要素に聞こえやすいです。

 しかし、たとえば第11回でお話ししたように、CM7のバックグラウンドに対してEm7を表現したい、といった場合に、ルートがアプローチノートとして聞こえると、表現したいコードが十分に表現されない、といった問題も起こって来ます。

また、こうしてある7thコードに対して、その9thを含む別のコードを表現したい場合、そのコードだけを見ると9thが単なるアプローチ・ノートに聞こえます。

 

App9th

 

これは、リズムのモチーフ等にもよります。サンプル1の演奏では、前半のリズミック・モチーフにおいて、よりアプローチノートに近い響きとなり、最後の部分のように、9thの音価が上がると、より9thとしてテンションの響きが強くなります。

♪ 枯葉: 別のコード進行でテンションを表現 3R57で演奏

サンプル2では、バッキングのコードに対して9度となる音から跳躍することになる、R375のパターンで弾いてみました。

♪ 枯葉: 別のコード進行でテンションを表現 R375で演奏

しかし、どちらの場合も、旋律を全体として考慮すると、少なくともあるコード上で別のコードを表現していることを読み取ることができます。

ちなみに、たとえば9thと一緒に11ths(11th、#11th)を用いると、より9thを表現しやすい7thコードを演奏することができます。

 

9thwith11

 

2) Q;転回形を自由に使っているようだが、それは問題とはならないのか?

転回形とは、あるコードの一部をオクターブ上下して演奏することですが、通常、そのコードの音価の間に転回する分には、問題ない、と言われています。

 

freely inverted

 

つまり、コード間のつなぎ目で展開するのはまずい、ということになります。

これは、次回お話するボイスリーディングに関連することですが、実はここでお話している内容は、「7thコードの不協和音程が解決するパターンという観点から、ボイスリーディングした内容を単旋律で表現する」ということですので、コード感を表現しつつ、テンションが解決するパターンを表現できれば、転回形を用いても問題ありません。ただし、思い出して頂きたいのは、「人間の歌える旋律が一番自然である」という観点です。

明確に「これ以上は歌いにくい」という基準はありませんし、不協和音が解決するか、平行で移動するか、あるいは跳躍するかと同様、個人の判断によるところです。

要は、「人間の歌える旋律が一番自然である」や「7thコードの不協和音程が解決する」という観点は、そうした観点から考察すること自体に意味があるのであって、「これはダメ」「あれはOK」という基準ではありません。

ただ、誰かが、不協和音が平行して連続しているのを、「これは「7thコードの不協和音程が解決する」という観点からみると、バッハの音楽と同じである」と言ったとしたら、その定義は誤りです

さて、次回は、ボイスリーディングについて、お話します。コウゴキタイ。。。



第13回




昨日はまた寝てないでーす。

が、仕事ではなく、物置製作のため!に徹夜しました!!
今日はウチの子供たち、広くなった部屋でのびのび!!

正直言って、バケーション欲しいですハイ。

さて、コードのボイス・リーディングのお話です。

前述の通り、「コード感」シリーズでお話している内容は、単旋律でコード感を出しつつ、自然なラインを作るには?という内容ですが、御説明した通り、これはとりもなおさず「7thコードの不協和音程が解決するパターンという観点から、ボイスリーディングした内容を単旋律で表現する」ということです。

つまり、7th(またはその転回形の2nd)というインターバルが次のコードで解決するようにボイスリーディングすると、コードのつながりがより自然に聞こえる、ということです。

タネあかしをすると、通常のメジャーまたはナチュラル/メロディック・マイナーのダイアトニック・コード同士をつなぐ場合、接続するコードのルートが何度離れているかによって、ボイスリーディングがパターン化できます。

その一方で、例として用いている「枯葉」は5th Circleそのままの進行なので、一つのパターンをそのまま利用することができます。しかし、ひとたびこれが5度以外のルート同士のコードボイスリーディングしようとすると、崩れてしまいます。つまり、別のパターンを使用する必要が出てくる場合があります。

そうした場合であっても、基本的に不協和音程である7thが下方向に解決することを念頭に置いて、コードトーンの順列の組み合わせから、演奏できるパターンを限定することができます。

 

Voiceleading Criteria

 

しかし、アトーナル領域・ジャズでは、場合によっては7thが下降で解決する形にボイスリーディング出来ないものもあります。その場合であっても、存在する不協和音程がステップワイズに解決する形のボイスリーディングをすると、自然に聞こえる場合が多いです。

 

7thto6th

 

♪ モーダル・インターチェンジでパラレル・ディゾナンス

♪ モーダル・インターチェンジでテンションを利用

また、特にモーダル・インターチェンジ等が用いられる場合等は、コードトーンのみでは事実上不協和音程から跳躍してしまう場合があります。

こうした場合、「テンションを聞かせる」のところで御説明した方法で、テンションを利用したコードを利用すると、7thが下降で解決する形にボイスリーディング出来るようになる場合があります。

 

CM7toDbM7

 

サンプルを付しましたが、両方とも「歌いにくい」かも知れません。。。

♪ モーダル・インターチェンジでディゾナンスから跳躍

♪ モーダル・インターチェンジでテンションを利用

しかし、モーダル・インターチェンジの7thを解決させる例では、前者でFの6thが ^2、後者では解決するCM7の5thが ^5 となっており、やってみるとテンションを用いてステップで解決する方が歌いやすいことがお分かり頂けると思います。。。

また、パッシング・ディミニッシュと呼ばれる、下降するディミニッシュのパターンでは、7thがDiminished音程であり、これは6thと異名同音(Enharmonic)です。

こうした場合、特にDiminished 7th をディゾナンスとして扱う必要はなく、むしろその名の通り、パッシング・コードとして、段階的に次のコードへと平行してボイスリーディングされている内容を表現するだけで自然に聞こえる場合が多いです。

などなど、ジャズのコンテクストで用いられる、さまざまなノンダイアトニック・コードについては、その性質と響きから、適宜判断が必要となります。

大切なのは、「人間の歌える旋律が一番自然である」や「7thコードの不協和音程が解決する」ということを念頭に置きつつ、自分でいろろいろ試してみることだと思います。


第14回




 

さて、コード感シリーズでは、単旋律でコード感を表現しつつ、どのような可能性があるかについて検討してきました。

その結果、対位法的な観点から何点か提案をしてきましたが、

「そんじゃあ、毎回おんなじコトをやれ、ってこと?それってアドリブじゃないじゃん。ぜんぜんクリエイティブじゃないよ。」

という突っ込みに対して、まだ回答していませんでしたので、今回はそのお話です。

それでは行ってみましょー。

 

 

巷で教授されている「アヴェイラブル・ノート・スケール」には、利用可能な音(コード・トーンとテンション)そして場合により長い音価を避けなければならないアヴォイド・ノートで構成される7つの音を利用することができる、なんて教えられます。「場合により」とは、アヴォイド・ノートがないスケールや、2つ以上存在する場合もある、と言うことです。

そんで、「アヴェイラブル・ノート・スケール」は、現今のバークリー・メソッドでは「コード・スケール」と呼ばれています。それは、以前もお話したとおり、「アヴェイラブル・ノート・スケール」に避けなければならない音が入っているのは、おかしいからです。

いずれにせよ、あるコードのインスタンスに対して、「利用できる音」は6~8個である、というのがバークリー・メソッドの主張です。

これは、とりもなおさず「制限」です。

なぜなら、そもそも1オクターブには12個の音が存在するからです。そこから、コードのクオリティに応じて6~8個の音に制限して利用している、ということです。

従って、たとえば今、これをさらに制限して、コードトーンである4音のみを利用することとしたら、これも五十歩百歩で「制限」には違いないはずです。

それでは、こうして制限された6~8個の音に対して、

「そんじゃあ、毎回おんなじコトをやれ、ってこと?それってアドリブじゃないじゃん。ぜんぜんクリエイティブじゃないよ。」

とは誰も言わないのは、なぜでしょうか?

実は、こうした「制限」とクリエイティビティとは、あまり関係が無いんですねー。

というのは、そもそもフレージングでどのような音を用いるか、ということ自体が占める役割が非常に小さいからです。

ジョー・ザヴィヌルに認められた唯一のギタリスト、スコット・ヘンダーソンがその辺詳しく説明してます。

後ろにあるMacが時代を物語っていますが。。。十年以上も前になりますが、スコット・ヘンダーソン、僕のギター・アイドルでした。

scotth

 

要するに、音楽においてある想を表現する場合「どのような音を用いるかは、あまり関係ない。大切なのは「フレージング」である」ということです。

スコット・ヘンダーソンは別のインタビューで

「だから、偉大なブルース・ギタリスト達のフレージングは素晴らしい。なぜならブルースであれば、利用する音がブルース・ペンタトニックに限られていて、重要なことがフレージングのみだからだ。」

とも言っています。

十数年前に、音楽理論をがむしゃらに学んでいた頃、このビデオを見て目から鱗が落ちた気持ちがしたものでした。

ともあれ、このビデオでは「フレージング」の要素として

1)Rhythm(リズム)
2)Contour(旋律の上下)
3)Notes(どのような音を用いるか)

がある、と言っていますが、これらについて、現在まで見てきた内容はどうでしょうか?

1)Rhythm(リズム)
これには「そのコードの長さ」という制限があるだけで、全く自由ということになります。

2)Contour(旋律の上下)
これはとりもなおさずコードトーンの4音をどの順番で演奏するかであり、組み合わせは4x3x2x1の24通りありました。そのうち、コード感の出る数パターンに限定して話を進めて来ました。
また、同じコードの音価内においては、どこで転回しても問題ない、と言われている、と申し上げました。

3)Notes(どのような音を用いるか)

これについては、「コード感」シリーズの目的上、コード・トーンに限定されていますが、これはScott Henderson氏によれば、全く問題にならないことになります。
さらに、テンションを含めたコードを用いるのであれば、あるコードに対して数種類のコードを演奏することができる可能性がありました。

これだけでも、たとえば「枯葉」の最初の8小節において、組み合わせは無数に存在します

さらに、これが「枯葉」の数コーラスをインプロヴァイズするということになれば、組み合わせは無限大です。

そうした「無数」に存在する可能性があるのに、クリエイティブになれない、というのは、コードトーンと、コード感を出すための制限とは無関係な部分に問題がある、といえるでしょう。

実際に、たとえば音楽においてある「スタイル」を造り上げている構成要素は、「何かをヤル」よりも、「これはヤラない」というように、むしろ何かを「やらない」場合の方が多いのです。

ある状況においていろんなことをやろうとすると、却って「何がやりたいのか」分からなくなってしまうし、伝えたいことが伝わらなくなってしまいます。

しかるに、ここでの目的は

「旋律でコード感を出すこと」

はっきりしています。したがって、余分なことをする必要は無いわけです。

しかし、実際のインプロビゼーションとは異なります。将来的には、あるいは「より実践的には」インプロビゼーションを構成する一部として利用するものです。

それでは次回、コード感を出しつつ、ウマウマのフレージングするにあたり、やはり対位法で言われている事柄について考察してみましょう!!




第15回




コード感第15回です。

前回は「フレージング」が重要である、というお話でした。

どういった音を用いるかは、さほど問題ではありません。

それでは、実際にどのような「フレージング」が、より「自然」とされているのでしょうか?

1)Motivic Development
前回スコット・ヘンダーソン氏のビデオでは、「繰り返しRepetitionが鍵である」というお話になっていましたが、実にその通り!あるモチーフを繰り返すことで、それがより強くリスナーに印象付けることになります。

特に「一発モノ」と呼ばれる、モーダルなコンディションでは、基底となる和声の上層部に、別の和声の進行等(進行していなくてもイイ。。)を重ねて演奏されることが多く、今まで御説明した内容を100パーセント有効に利用することができます。つまり、こうした場合には、元となるコード(1つor複数のコードのパターン)とは別個のコード進行を考えてゆきますので、単旋律でいかに和音を表現するかが重要になるのです。

ちなみに、僕はジャズよりも「フュージョン一発モノ」の方を演奏する機会が多いので、モードの方がはるかに得意ですねー。アメリカでも「ギグ」と言えば一発モノ中心のRnBバンド・ゴスペルバンドばかりでしたし。ギグでジャズをやることはありませんでした。ラテンは結構やったけど。。。

 

それはともかく、

「ジャジャジャジャーン!」

「ジャジャジャジャーン!」

というベートーベンの運命のモチーフは皆歌えるほど有名ですが、これもモチーフ繰り返しの例の一つですね。

あとは

かーえーるーのーうーたーがー
           かーえーるーのーうーたーがー

という輪唱(カノン)なんかもその例です。作曲技法ではCanonic Deviceと呼ばれます。サウンド・サンプル「兄弟舟」にも多数登場します。ちなみに「兄弟舟」のアレンジ、すべてMotivic Developmentされた内容で成り立っています。元のメロディがどんなふうに展開されているか分かるかな?

そんで、ベートーベンの第五のモチーフですが、1回目、2回目、3回目と、変わっている部分があります。

それが「音程」です。つまり、リズムのモチーフをそのままにして、音程を変化させることにより「展開」しているのです。

こうしたモチーフには、長いものから短いものまでありますが、全体として共通する要素を用いて、旋律が「流れて行く」ようにします。つまり、何らかの音楽的な「想」を物語ってゆくのです。

その意味において、3R57のパターンは、「モチーフ」であると言えるでしょう。なぜなら、旋律の途中でオクターブ移動しない限りにおいて、同じContourで繰り返し演奏されているからです。

また、あちこちでオクターブ移動している場合であっても、リズムを一定にしたり、あるいは色々と展開させてゆくことができます。

あるいは、別のパターンを組み合わせて用いることで、より長いパターンを展開してゆくことも可能です。

展開の手法としては、Intervalic/Rhythmic Diminution/AugmentationやAddition/Subtraction、Retrogression/Inversion などの方法があるとされていますが、用語はともかく何かしら元のアイディアを「ひねる」ということが肝心。

たとえば先日の3R57の例では、9小節目からRhythmic Displacement/Augmentationなどを使って展開しています。

2) Climax

カラオケなどで歌を歌う場合などでも、一般的に高い音の方が「盛り上がっている」感じがしますよね?クラシックでは、「全体の70パーセント前後のところで、その旋律の最高音を持ってくるようにする」と教えられます。

しかし、ある程度じっくりと練り上げることができる作曲とは違って、インプロビゼーションでは、これはミズモノである、と言えると思いますし、音の高さ以外にも、音量や音価の変化などにより、Climaxを表現することが出来ます。

またまた10年以上前の話ですが、ギタリストの養父貴さんが、ソロの「盛り上がり」というのはいろんなパターンがあっていい、と仰っていたのを思い出します。

こんな感じ。

 

solo

 


ということは、音の高さ、大きさ、長さ等、何らかの形でクライマックスを設けることにより、ドラマチックなソロを構築することができる、ということです。

もうお分かりかもしれませんが、スコット・ヘンダーソン氏が言うように、ソロの盛り上がりには「どの音を利用するか」は関係なく、クライマックスはたとえペンタトニックだけでも、はたまたContourモチーフ3R57であっても、十分に実現可能です。

ところで、

今まで御説明した通り、7和音は非常に表現が困難です。

そうしたわけで、モチーフとしてはトライアド(三和音)のインプリケーションのあるものの方が多用されます。アカンパニメントでも、コードとして白タマや、個別進行なんかで利用されることが多いです。

その場合は上から

○(アッパーストラクチャ・トライアドの構成音)
○(アッパーストラクチャ・トライアドの構成音)
○(アッパーストラクチャ・トライアドの構成音)
3 or 7
7 or 3
Root

という順番で演奏します。つまり先日申し上げたBasic Chord Soundの上層部でUpper Structureを演奏するわけです。

ちなみに、モチーフの「ネタ帳」として有名な本に、Slonimskyの本があります。

John ColtraneやHerbie Hancockが利用している(いた)ことでも有名。
僕の大好きなGeorge Garzoneは、これを今でも毎朝練習しているとのこと。。。

これです。僕のはペーパーバック版ですが。。。

 

Slonimsky.jpg

 

しかし、こんな分厚い本から無理して美味しそうなモチーフを探そうとしなくても、実生活やバンドのリハーサルで耳にする「音」をモチーフにするだけでも、かなりソロのバリエーションが広がります。

そうした場合に、モチーフそのもの以外にも、それが用いられているハーモニック・コンディションと、モチーフのハーモニック・インプリケーションの関係を調べると、より綿密な展開を行うことができます。



「コード感」シリーズ総集編3はこちら


 

 

 




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